――高遠 Side――
雛乃がお手洗いに行ってくると言って教室を出ていって少し経つと、騒がしかった教室は俺以外に誰もおらずシーンと静まりかえっていた。
暇だ、と思ってケータイを取ろうとポケットに手を突っ込んで、手にしたケータイを引っ張り出したとき、一緒になってポケットに入っていた家の鍵が床に落ちて、チャリンと金属音が響いた。
鍵を落としたことに気付いた俺は、床に手を伸ばして鍵を手に取る。
鍵に取り付けたお守りを見つめて、自然と口元が緩んでいく。
雛乃の席に座っている俺は、お守りを見つめながら、机に頬杖をついた。
雛乃、遅いなー。
早くチョコ欲しいんだけど。
今日の昼休み、雛乃がカバンからお弁当を取り出すときに見えてしまった、カバンの中のピンクのラッピング。
昼休みにくれんのかなーって期待してたのに、空き教室には持ってきてなかったみたいで渡されなかったし。
そういえば、朝雛乃に会った時、心なしか雛乃がモジモジしていたのは、あのチョコを渡そうとしてくれてたのか…?
どうせ照れて渡せなかったんだろうな、と照れた時の赤面した雛乃の姿を思い出して笑わずにはいられない。

