『あんなことがしたかったわけじゃないのに…っ』
肩を震わせながら、我慢しようとしても止まらない涙を流す島津さんの気持ちが、私の心に流れ込んでくる。
『ただ…っ、高遠の心を私に向かせたかっただけなのに…っ』
島津さんはただ、千尋くんに恋してただけなんだ。
千尋くんのことが好きで好きで仕方がなくて。
自分の想いに気付いてもらえない虚しさと、自分の気持ちを素直に伝えられない苛立ちをどうしていいのか分からなかっただけなんだ。
千尋くんに振り向いてほしくて、私にその怒りの矛先を向けることしかできなかったんだ。
『こんな私…っ、最低――ッ!』
自分の袖を使って涙を拭う島津さんを見て、私は廊下に落ちたチョコを拾った。
これまで私は彼女にたくさんたくさん傷つけられた。
彼女の言葉はナイフのように鋭くて、心が引き裂かれるように痛くて。
でも、私だって彼女を傷つけてた。それに気づけなかった私も悪いんだ――。
「……意気地なし。」
『…っ』
ゆっくりと島津さんに近づいた私は、徐に口を開いた。

