「はぁー…。」
数分後、やっと動悸の激しかった心臓を落ち着かせた私はお手洗いを後にする。
あーもう…本当にどうしよう…。
教室で渡す?…でも、それだと帰り道が気まずくない?
これは別れ際に渡した方が良い気がする、と、とりあえずその場しのぎのプランを考えていると、私の教室のドア前の廊下に立っている人に気付いた。
こちらには背を向けていて顔は見えないけど…察してしまう。
「島津さん…?」
『ッ――!?』
私の小さな声に振り返った島津さんは、とても驚いた様子で私を凝視した。
声をかけたのが私だと分かった瞬間、手に持っていた小さな包装を背中に隠した。
唇をかんで私からあからさまに視線を逸らす彼女を見て分かってしまう。
背中に回したその手にあるのは、千尋くんへのチョコなんだよね――?
「千尋くんは教室にいるよ…?」
『わっ、分かってるわよ…ッ!』
何故かキッと島津さんに睨まれて、私は肩をビクつかせた。
また怒らせちゃった…?

