――高遠 Side――


『高遠、飯食おーぜ。』

「……っ」


昼休み。

俺は鞄から机の中から、思い当たるもの全てに手を滑り込ませていた。

――ない。

信じられない気持ちで筆箱に目を向けるけれど、筆箱のチャックに結んでいたお守りはなかった。

何で?…昨日は確かにあったはずなのに。

雛乃からもらったお守りがないと気付いたのは、今日の1時限目。

授業の合間に教室のいたるところも、図書室も印刷室もさがしたけれど、どこにもなかった。

あるとすればもう俺の鞄の中くらいしかないんだけど…、鞄の中を探すのはもうあれこれ10回目だ。


『どうした?』

「いや…ないんだ。」

『何が?』


弁当を持った久松が、焦って鞄の中をごそごそしている俺を不思議そうに見ているが、今はそれどころじゃなかった。

何でないんだよ…っ!?

どんなに探しても見つからないお守りに俺は絶望を覚えた。