ザッ
土砂降りの雨の中、中庭に出てきた私はお守りを必死に探していた。
どこ?どこにあるの?
雨が降っているとか、上靴だとか、もうすぐで授業が始まるとか、そんなことは全く頭になかった。
ただ、私の目の前から消えていったお守りを探すのに一生懸命で。
あのお守りは、私と千尋くんの思い出だから。
千尋くんは嫌だったのかもしれないけど、私にとっては綺麗な思い出だった。
その思い出の象徴を捨てられたままにするわけにはいかないの。
「……っ、」
涙でゆがむ視界を、濡れた制服の裾で拭いながら、片っ端から中庭の雑草が生えている中を捜索した。
ダメ。今は泣いたらダメだ。
これからのことは、お守りを見つけてから考えればいい。
雨でぬれた制服が身体にピッタリとくっついて気持ち悪さを増しているが、それさえもどうでもよかった。
遠くで5時限目の始まりを告げるチャイムが鳴っても、私は気付かずにお守りを探し続けた。

