「っ・・・?」
目の前に差し出されていたお守りが消えて、驚きながら島津さんを見ると、目の前の彼女はニヤッと意味深に笑っていた。
『そんな簡単に返すわけないじゃん。』
「あ――っ!」
島津さんの手におさまっていたお守りは、踊り場の開いていた窓から投げられて姿を消した。
お守りが中庭の茂みに消えていくのを、窓に駆け寄って眺めるしかなかった。
『アンタもあのお守りと一緒。捨てられて終わり。』
「ッ―――」
お守りを渡したとき、ありがとうと言ってくれた千尋くんの笑顔が歪んで見えた。
ウソだったの?
あの時の告白も、期末テストで頑張ったことも、クリスマスデートも、何もかも…私だけが本気だった?
私に向けるあの笑顔は全部偽りだった?
クラゲのストラップも、ミサンガも、お守りも…千尋くんにとっては全部いらないものだった?
『だからもう――ちょっと!?』
「っ――!」
何も聞こえなかった。
島津さんの牽制も聞かずに、私は階段を駆け下りた。

