私から千尋くんに別れを告げろっていうの?
こんなに好きなのに?――どんな顔で言えばいいというの?
『千尋は優しいから言えないだけ!アンタが可哀想だって、いらない責任感じてんの!そんなことも分からないの!?』
「――っ」
信じたくない。もう聞きたくない。
それなのに、島津さんの言葉を違うって否定できない私がいる――。
千尋くんは、本当に私に想いはないの?――その疑問は、島津さんが差し出したもので確信に変わってしまう。
『何で私がこれを持ってるか分かる?』
「ッ……。」
島津さんの白い手に収まっている青いお守り。
私が千尋くんに渡した、太宰府天満宮の学業守り。
なんでこれを、島津さんが…っ?
『いらないからあげるって、くれたの。千尋が、私にね。』
想像したくもなかったことが、現実になっていく。
昨日の放課後、千尋くんとのことを楽しそうに話してくる島津さんは、傍から見れば可愛らしい恋する乙女なんだろう。
でも…私には、ただの悪魔にか見えなかった。
『これで分かったでしょ?千尋はアンタのこと、何とも思ってないの。…っつーか、これいらないから。』
アンタが千尋にあげたものなんて、気持ち悪すぎていらない、と差し出されたお守り。
それを取ろうと手を伸ばして、お守りに触れようとした瞬間、バッと島津さんがお守りを握りしめた。

