ガラッ、
『高遠ー、いるーっ?』
うるさい教室で一際大きな声が俺を呼んだ。
開いた教室のドアに目を向けると、そこには島津。
「…何だよ、島津?」
『まだ図書のたより終わってないでしょ?仕上げやろー!』
にこやかにそう言って俺に近づいてくる島津。
昨日のうちに仕上げなかったか?
「あとは印刷だけだろ?それくらい一人で――」
『ちっ、千尋くんっ…!』
図書委員の仕事より、今は雛乃のことのほうが大事だ。
そう思ってあとのことは島津に任せようとすると、それを遮るように雛乃が口を開いた。
「どうした…?」
『千尋くんの仕事なんでしょ?私…、華ちゃんと帰るから、気にせず行っていいよ。』
「っ、いや、でも…っ」
『ほら、高遠ー!彼女もそういってるんだしさ~!』
バイバイ、と小さく手を振って無理な笑顔を向けて柴戸の方に行ってしまう雛乃を追いかけようとしても、そばにいた島津に腕を掴まれて、それもできなかった。
『行くよっ!』
島津に無理矢理教室から出されて、雛乃の小さな背中が目に焼き付いたままだった。

