――高遠 Side――
「はぁー…。」
昼休み。
俺はこれが何回目になるかも分からない重いため息をついていた。
『さっきからうるせーぞ。』
「……。」
目の前で弁当を食べている久松の冷たい目が俺に向く。
確かにため息しか溢せない俺のせいで空気が重くなってるのは分かっているけど、それでもため息をこぼさずにはいられない。
チラッと教室の真ん中に目を向けると、柴戸の席で柴戸と楽しそうに談笑する雛乃の姿が目に入った。
でも、雛乃の大きい目はまだ赤いまま。
――ドキュメンタリー番組を見て泣いた、なんてウソだってわかってるのに。
「はぁー…。」
『俺がため息つきてぇーよ。』
久松の小言なんて、雛乃のことで頭がいっぱいの俺には届かない。
昨日の放課後から、いきなり態度を変えた雛乃に、俺は激しく動揺している。
気づかぬうちに俺が雛乃を傷つけるようなことをしなのかと悩んだけれど、雛乃は違うと首を振った。
ウソは付けない正直な雛乃が、ウソを付いてるとは思えない。
でもだったら、何で俺を避けるような真似すんだよ――?

