――『雛乃。』
その日の昼休み。
4限目の授業のテキストを机の中にしまっていると、お弁当箱を持った千尋くんがやってきた。
『いつもの――』
『ひーなーのっ!』
「あ、華ちゃん。」
お昼ご飯を誘おうとした千尋くんの隣から、華ちゃんが割って入った。
今は、華ちゃんが心の頼りの私は、華ちゃんに笑顔を向ける。
『あっ、高遠ごめんねー!今日は雛乃、私とご飯食べるから~っ』
『え?』
「うん、そうなの。ごめんね、千尋くん。」
今まで私と千尋くんのお昼ご飯を邪魔したことのなかった華ちゃんが入ってきたことに驚いたのか固まっている千尋くんから席を立って離れる。
華ちゃんの目配せによって、すかさず久松くんが固まったままの千尋くんをご飯に誘ってくれた。
『…これでいい?』
「うん、ありがと。」
私が華ちゃんに頼んだこと。
それは――…、
私が千尋くんと距離を置くのを手伝ってほしい、というものだった。

