『どんな人?写真ないとっ?写真ーっ!』
「なっ、ないよ!」
駅を出て、私の家まで歩きながら、朱莉は千尋くんの容姿がとても気になる様子。
千尋くんの写真なんて、持ってない。
プリクラくらい撮りなさいよ!と怒る朱莉に、ゴメンゴメンと謝っておく。
千尋くんとプリクラ…?そんなの、恥ずかしすぎてできるわけないじゃん。赤面してばっかで、きっとまともに笑顔も作れないよ。
『えー?じゃあ、雛乃の口からでもいいけん、どんな人か言ってみ!』
「え…っとー…、」
嫌だ、という拒否の言葉は、口から出る直前に飲み込んだ。
朱莉のえくぼのない笑顔を前にしたら、私はいつだって朱莉には逆らえなくなっちゃうのだ。
「背が高くて、格好良くて、頼りがいがあって、心が広くて、優しくて、でも…ちょっと意地悪、かな?」
『ふ~ん…っ?』
「なっ、何よー…?」
『顔が赤いよ、雛乃っ♪』
そうさせたのは朱莉じゃない!と思うけど、口に出して言えず。
言ったらきっと、倍返しで返ってくるはず。

