『ケータイにつけよーっと。』
千尋くんは上機嫌にそう言って、ポケットから取り出した黒の携帯電話にストラップを慣れた手つきで取り付けた。
『雛乃、ケータイ出して?』
「え?あ、うん。」
千尋くんに言われたとおりに、私はバッグの中から白の携帯電話を取り出して、千尋くんに渡した。
私の携帯電話を持っている手と反対の手に収められたピンクのクラゲのストラップ。
私が気づかない間に千尋くんに渡っていたそれは、千尋くんの手で私の携帯電話に取り付けられた。
『…これでお揃い。』
「…っ、うん。」
返された私の携帯電話から揺れるピンクのクラゲ。
大好きな人とのお揃いのストラップは、私の最高の宝物になりそうだ。
私の携帯電話と千尋くんの携帯電話を並べて、ゆらゆらと揺れる2匹のクラゲを見て、千尋くんとお互いに笑いあっていると――…、
『――あ。』
「雪…っ!」
漆黒の夜空からシンシンと舞い降りる雪を、千尋くんと一緒に見上げた。

