『……雛乃。』
「ん、何?」
お弁当を広げてモグモグと食べていると、隣にいる高遠くんから声が掛かった。
口に含んでいたご飯を、急いで喉に通す。
『…卵焼き、美味そう。』
「えっ…?」
呟いた高遠くんの目線は完全に私のお弁当にはいっている卵焼きに向いている。
た、食べたいのかな…?
「食べる…?」
『えっ、いいの?』
コクン、と頷いて、私は箸で卵焼きを掴む。
つまんだ卵焼きを高遠くんのお弁当箱に移そうとしたとき、ちょっと待って、と高遠くんが卵焼きをつまんでいる箸を持つ私の右手を掴んだ。
「っ…?」
ポロッと落ちそうになった卵焼きをつまむ箸にググッと力を入れると、私の手を掴む高遠くんの手の力によって高遠くんのお弁当箱に向かっていた箸が、高遠くんの口に向かっていく。
「っ……!!」
『ん、美味い。』
あっという間に私の卵焼きは高遠くんの口の中に収まって、満足そうな高遠くんの笑顔を見上げながら、私は赤面しまくっていた。

