『あ、そうだ。千尋のおでこにある濡れタオル、また冷やして代えておいてくれる?』
「あっ、はい!」
高遠くんのお部屋に続く廊下の横にあったリビングに寄ったお姉さんから預かった氷水が入った洗面器。
高遠くんのお部屋は2階の奥にあって、お姉さんにあとはよろしく、と高遠くんの看病まで任されてしまった。
コンコンッ
「たっ、高遠くん!私…小日向だけど。」
勝手に中に入るのもどうかと思って、ドア越しに口を開く。
『えっ、小日向…!?』
「うん。あの…入ってもいい?」
『えっ、あっ……いいけど、』
中から驚いたようなちょっと鼻声の高遠くんの声が聞こえて、私はガチャッと部屋の扉を開いた。
――パタンッ
「だ、大丈夫…?風邪ひいたって聞いたから、差し入れ持ってきたよ。」
中に入ると、窓際のベッドで起き上がって私を目を見開いて見つめている高遠くんがいた。
Tシャツ姿のいつもとは違う高遠くんを前に心が弾むのを感じつつ、それを悟られないように中に入った私は、ベッド前にある簡易テーブルの上に差し入れと洗面器を置いて、自分の通学カバンはテーブルの横に置いた。

