高遠くん――…
教室で見る高遠くんの笑顔とか、眠そうな顔とか、たまに見せる真剣な表情とか、誰にでも優しくて、頼み事は快く引き受けくれるし、勉強はちょっと嫌いそうだけど、体育とか体を動かすことは好きなようで、バレーを頑張る姿とか。
色んな高遠くんが私の中でフラッシュバックしていく。
あの時の高遠くん……顔が赤かったなぁ…
ふと部屋の中央にある簡易テーブルの上にあった、この前借りたばかりの高遠くんのマンガが目に入る。
"ダンクシュート"というタイトルのそれは、バスケを頑張る男子高校生たちの話で、コメディタッチでありながらもシリアスな核心部分に触れて、この前観た"愛のキセキ"とはまた違った青春が描かれている。
まだ6巻目しか借りていないそのマンガに手を伸ばし、両手で掴んだ。
「……私も好き。」
高遠くんから言われた"好き"と、私が高遠くんに抱いている"好き"は、違うものかもしれないけど。
でも、こんなにもドキドキしてしまう私は、相当なおバカさんなのかもしれない。
……それでもいいと、思ってしまうんだから、すごいよね、恋する乙女って。
高遠くんには直接言えなかった言葉を一人、誰もいない自分の部屋で呟いただけですごくすごく胸の奥が切なくなった。

