『兎』


抱き締められて
震える身体
体温なんて感じなかった

淡く滲んだ視界の隅に
いつの間にやら危険信号

恐怖って
こんな風に生まれてくるのか
気付いた時にはだいたい遅い

怖いよとても

埋もれそうな小さな呟き
どうして君が泣きそうなのか
私にはもう分からないけれど

潤んだ瞳はまるで兎で

なけなしの演技力
総動員して

ただ

怖くないよと嘘を吐く