オレンジ色の現の部屋で、二人ともパンツ一枚のままで、とろろそばを食べているという滑稽な場面で現は言った。

「帰ってきたらさ、写真展を開きたいんだ。雑誌の中のような小さな写真じゃなくてさ、目いっぱい引き伸ばしたのを、何枚も何枚も飾ってさ。近くで見てもわけがわかんないくらいのやつ。」

「いいじゃない。向田現の写真展ね、楽しみ。」

私がそう言うと、現は嬉しそうに微笑んだ。

「むっちゃんにも見せてあげたいなぁ。プーケットの市場の、まるで絵の具を塗ったように鮮やかな果物の色だとか、ジャマイカの尋常じゃないほどに澄んだ海に透ける魚の群れだとか、ガンジスの河縁で見る日の出とか。綺麗すぎてきっと背中がぶるぶるってなるよ。」

現は子供のような無邪気な笑顔でそう言うと、満足そうにそばつゆを飲み干した。
その後で、綺麗な布で覆われたラックの上に詰まれた洋服の中から、鮮やかなレモンイエローのTシャツを一枚抜き取った。
そこに黒い油性のマジックで、私の住所と名前と電話番号をでかでかと書いた。