そこで私たちは、私が借りてきた洋画やふたりの好きなドラマなんかを観る。
ソファの上で何度か手は繋いだ。抱きしめたり、抱きしめられたりもした。
でも、それ以上はお互いがブレーキをかけていた。

ちょうどその頃、言葉の端々やちょっとした仕草から、現が私と微妙な距離間を保とうとしているのがよくわかった。

そうだよね。私に旦那さんがいるんだと思っているんだもの。これ以上踏み込めないよね。自分でそう仕向けたっていうのに、私はいつももどかしさを感じていた。
現とこのまま一緒にいられたらどんなに幸せだろう。

それでも、現に全てを話して、床につく両親を紹介する勇気はなかった。
ましてや、私のことも彼らのことも含めて、全てを抱えて一緒に暮らしていって欲しいだなどと、どうして言えるだろう。

現が私のことを大切だと思ってくれているのも分かっていたけれど、そのことが現の仕事の妨げになることも、充分に分かりきっていた。
仕事の邪魔だけはしてはいけないと思った。

この気持ちを現に伝えるわけにはいかなくて、かといって置き去りにされてしまうのはあまりにも哀しくて、私はいつももやもやとしていた。
そうしているうちに、一カ月に何度かまた新しい現を知る。
ちょうど良い距離なのだ。
会えそうで会えない、忘れられてしまいそうで忘れられない。そんなもどかしい距離に、私はいつも欲情していた。