「意外だな、明るいから夏生まれかと思った。」

「冗談でしょう?店だと必要最小限しか話はしないし、つんけんしてるのに。」

「ふははは、うん、確かにつんけんしてるよね。でも頑張って無理やりそうしてるような気がしたけど。明るいって言ったのは君の周り。凄く明るいものを纏ってるから、店の中でも目立つんだよ。」

つくね男は、別に私を褒めようとしてそう言ったわけではないかもしれないけれど、店のお客さんに、下手に持ち上げて容姿を褒められることよりも、さらっとせう言い放った男の言い回しの方が数段嬉しく感じた。

「人の内面を読み取るのが上手そうですよね。」

「人っていうものが好きなんだ。だからこんな仕事をしてる。」

男の人に対して、ましてやお客さんには一線を置いている私だけど、このつくね男の話は心地良く耳に入ってきた。
決して無理にこじ開けようとしているのではなくて、真っ直ぐと自然に流れ込んでくるような感じ。
丁寧に響く低めの声も良かった。
きっと話し方と同じように、真っ直ぐな人なんだと思う。
話をしていると、なんとなくだけど、今まで店の中で頑張って形成していた自分が、この男の前では通用しないような気さえした。




素面のつくね男はしっかりとした足取りで、私は自転車を押してたまに少しよろめきながら、生暖かい空気の漂う夜道に、ふたつの並んだ影を落としながら歩いていた。

そう、現とはそんな風にして仲良くなっていった。