下駄箱で靴を履きかえ、玄関に出る。
すると、そこにはいるはずのない人物がいた。


「...孝輔...」

「よぉ。あいつの調子はどうだ?」

「え...?」

「階段から落ちた、橋屋明のこと言ってんの」

「...まさか、それってお前が...!?」


俺は目の前のソイツを睨んだ。
ソイツは俺とは真逆の、嘲笑するような笑みを浮かべ、「お前が楽しそうなの、見てるとイラつくんだよ」と言った。


「だ、だったら俺を...明じゃなくて、俺を痛めつければいいじゃねぇか!」

「言っただろ?お前とアイツが仲良くすれば、アイツを痛い目に遭わせるって。約束破ったの、お前だろ?お前がアイツを落としたんだよ」

「そんなの...じゃあ、俺は...明を助けるためには...」

「お前がアイツから離れれば済むんだよ。そんなことも分かんねぇのか?」


そう言われて、俺は身動きが取れなかった。
息が、詰まるような、手足が、震えているような。
自分でも、よく分からない。

ただ一つ、分かったのは、明を助けるためには、俺が明から離れる、ということだった。