〝人〟を決定的に信じらなくなってしまったのはあの時からだ。
幸次や、聖達でさえ信じられなくなった時期。世界の全ては嘘なのだと嘆いていた。耳を塞ぎ、目を閉じ、口を噤んで、そして。
「お、そーいや出てくる前に綾から電話があったンだけどさ。夕方過ぎには帰って来るから、みんなで飯くおーって。しのぶ食堂でいいべや?」
「いいって言うかもう決定なんだろ?好きだな、しのぶ食堂」
「ははっ、バレたか~」
春の太陽が運んでくる陽だまりに浮かされて、この先で待っている暗闇に気付かない。何者の侵食も赦さない黒が、手招きをしていることを。気付かない、気付けない、気付かない。
「それにしても暑いな」
「春って短いもんな。すーぐ夏が来るべ?ま、夏は嫌いじゃねえけどよ」
「夏休みがあるからだろ?」
「……え、俺の頭ンなかってスケスケ?」
「スケスケでバレバレだなあ」
「うっそだろ?!」
一瞬の幸福は、絶望へのカウントダウン。
せっかく塗り固めていた足元の地盤が緩んでいく。地を失ってしまったら、後は真っ逆さまに落ちていくだけ。重力には逆らえない。
幸次や、聖達でさえ信じられなくなった時期。世界の全ては嘘なのだと嘆いていた。耳を塞ぎ、目を閉じ、口を噤んで、そして。
「お、そーいや出てくる前に綾から電話があったンだけどさ。夕方過ぎには帰って来るから、みんなで飯くおーって。しのぶ食堂でいいべや?」
「いいって言うかもう決定なんだろ?好きだな、しのぶ食堂」
「ははっ、バレたか~」
春の太陽が運んでくる陽だまりに浮かされて、この先で待っている暗闇に気付かない。何者の侵食も赦さない黒が、手招きをしていることを。気付かない、気付けない、気付かない。
「それにしても暑いな」
「春って短いもんな。すーぐ夏が来るべ?ま、夏は嫌いじゃねえけどよ」
「夏休みがあるからだろ?」
「……え、俺の頭ンなかってスケスケ?」
「スケスケでバレバレだなあ」
「うっそだろ?!」
一瞬の幸福は、絶望へのカウントダウン。
せっかく塗り固めていた足元の地盤が緩んでいく。地を失ってしまったら、後は真っ逆さまに落ちていくだけ。重力には逆らえない。



