「なんでだよ、早紀」 小さくなっていく早紀の後姿を見つめながら、俺は堪らず目を伏せた。無意識の内に美菜と重ねてしまったのかもしれない。叫びも、奇行も〝怯え〟も、彼女によく似ていたから――だから、 「千秋?」 「っ、」 聖の声で我に返った俺は、自分の身体の異変に頭を抱えた。 「………最悪だな」 全身から噴き出す汗、小刻みに震える肢体。 でも、顔は笑っていた。笑っていたんだ。 〝あんなこと〟があって。綾が何者かに殺されて、早紀は狂っていて、この村に帰って来て。それでも俺は高揚している?