立志式を終え、大人になったと見做(みな)される十五の夏。

その、十五になった者のなかから一人〝神人(かみびと)〟になる人物を選び、選ばれた人間は一ヶ月間、他人との一切の関わりや欲などを断ち、神へと近づく厳しい儀式をこなしていく。そして祭り当日は全身を清め、白装束で境内に解き放たれる。これが通称――神人(かみびと)(まひ)

また、神人を迎える村人達は各々に面をつけ、身許を隠さなければならないということ。更に祭りの間は誰とも口を利いてはいけないということ。名を、絶対に名乗ってはいけないということ。

確かに四年前に見た光景と重なる部分はある。

けれど、どうにも腑に落ちない。


「……だってアレは」


神さま、だなんて思えなくて。

どちらかといえば悪魔や悪霊の類に取り憑かれた〝負〟のオーラを纏った人間に見えた。俺と同じ考えに至っていたらしい聖達も、首を傾げて神妙な顔をしている。――それに。


「神人から最後まで逃げきることができた者は、災厄も祓われ、願いも叶うと言われておる」


普通は逃げるのではなく、触れたり触れられたりするのではないだろうか。ご利益のありそうな〝神さま〟から逃げるとは、なぜ。