あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─

まるで何かから逃げているような、いや。

実際に逃げていたのだと思う。

顔にお面をつけ、誰が誰だかなんて解らない。解らせない(・・・・・)為とも言えるだろうか。人と呼んでもいいものかと迷うほど、気味の悪い恰好をした村人達が、走る、走る、逃げる、逃げる。

白装束を身に纏い、奇声を上げる一人の少女から。


「あ゙あ……うヴ……あああ!!」


酷くショックだった。

けれど、その感情はすぐに別のものへと入れ替わる。

今までに見たことのない、異質で奇異な世界。全身に駆け巡った衝撃は、どんな既存の造りものとも違うリアル。まさか自分達の村でこんなことが行われていただなんて。

怖い、怖い、怖い、不気味で、でも。


「ねえ、千秋、帰ろうよぉ」


綾の声は俺の耳には届かない。

下っ腹の奥から込み上げてくるぞわぞわとした感覚。その快感に、ただ酔い痴れた。刺激の少ないこの狭くて小さな箱庭で目の当たりにした今日の日の出来事は、俺達になにを残したのか。