「……俺、さ。千秋や聖のこと、ずっと羨ましかったよ」


まるで幸次の言葉に誘われるように、流されて、浚われて、消えてしまったはずの色がこちら側へと戻ってくる。踊る、踊る、緑。


「なんつーの?なんでも出来てカリスマ性のある千秋に、男前ですげえ優しいじゃん?聖って。二人とも俺からしたら雲の上の存在でさあ、……羨ましかったんだ」
「幸次」


黄昏時の風景は物悲しい。全てが黒色に変わる前の濃いオレンジ。


「なあ、千秋」


不意に強く掴まれた腕が、二人分の熱を帯びて痛んだ。


「お前もさ、美菜のこと……好き、だったんだろ?だからあんな…」


濁された言葉の続きは聞かなくてもわかる。だって指先から直接注ぎ込まれたから。そうだな、そうだろうな。〝今〟素直にならなくていつ素直になる気だ。なにもかもが手遅れだとしても。

二人の前でぐらいは、せめて、せめて。


「………ああ、俺も……っ、俺も……好き、だっ…た」


言葉にすればする程に思い知らされる、自分が犯した愚かな行為。好き、だからこそ。ぐちゃぐちゃになって、滅茶苦茶に壊れた。