それっきり、誰も声を出せなくなって。日中の肌が焦げるような暑さを強調する蝉の合唱だけが、いつまでも鼓膜の奥でこだました。

全身で感じる夏が苦しい。此処の夏は、いつまで経っても変わらないから。そう、まるで村全体が閉じ込められているみたいに。

ジリジリ、ジリジリ、心と身体を焦がす。


『《つらそうだね、ちーちゃん》』


ずきん、

脳髄に直接響く声。風に煽られる木々の葉が、ざわざわと啼いている。顔を上げたくない。上げたらまた囚われてしまうのだろう。

美菜の、幻影に。


『《あしぃ、もらったよ?つぎはからだをもらいにくるねえ……フフふ、フフ……ふふふふ…》』


蟀谷(こめかみ)を伝い、顎から離れる汗の粒がぼやけて見えた。俺だけ?これは、俺だけに聞こえているのか?息さえ出来やしない。