映画館のロビーに併設してあるお洒落なカフェで、いい歳をした大人達がはしゃぎ合う。まるで昨日も、その前も、ずっと会い続けていたかのように。数年、揃って会えてなかったブランクなんて全く感じさせないで、こんなにも楽しい。こんなにも嬉しい。


「しっかし早紀が小説家になるとはねえ。そんで映画化とか!おまっ、どんだけ稼ぐ気だよ!つーか、俺の扱いマジで酷くね?」
「はは、ごめんって。だって幸次はやっぱり良い奴だし?」
「それ褒めてる?」
「褒めてる!し、幸次はほんといい方!たぶん!」
「いや、本当にな」
「「あ゙」」
「どう考えても一番酷いのは俺だろ」


苦笑しつつ、手元のパンフレットを広げる聖。


「……見てくれたの?」
「ん、さっき美菜と一緒にな」
「ひーちゃんの俳優さん格好良かったねえ……あっ!もちろんひーちゃんの方がぜんっぜん格好良いけど!」
「あー、ハイハイ。独り身の前でイチャつくの禁止~!って、一番扱い酷いのって私じゃん?初っ端から死んでたんですけど!」


ぷくっと頬を膨らませ、仁王立ちで抗議をしてくる綾は昔のままの綾すぎてほっとする。綾だけじゃない。みんな、みんな、変わった(・・・・)けど変わらない。これが、三十になった私達の今。