「三年振り、か」


高校を卒業して以来、一度も帰って来なかった場所。

遠ざけて、閉じ込めて、なかったことにしたかった場所。

そこはお世辞にも居心地の良いものではなかった。それでも、埃ひとつない部屋を見ると良心が痛む。物の配置や本棚に変化はないけれど。定期的に掃除が施されている形跡がちくりと胸の奥を刺す。


「親父も居なくなったってのに……よくやるよ、母さんは」


親父は俺が高校三年生の秋に母さんと離婚をして村を出て行った。理由は単純明快。美菜の母親との不倫が公になったことと、それらを理由に村長の座を弟に奪われ、気が狂ったこと。

流石の母さんも庇い切れなくなったらしい。笑えるほどに呆気ない親父の失脚。もう、アイツに会うことはないだろう。

でも俺は〝藤川〟の姓を残した。母さんの苗字は選ばず、敢えて大嫌いなアイツの苗字を選んだ。これは俺の罪の烙印。罪の意識。