長い、長い、眠りから目を覚ました時。

すぐ傍には母さんがいた。手のひらに感じる温かさは聖がくれたものと同じ。聖がくれた温もりとなにも変わらない優しさ。けれど。


「目覚めてすぐにで悪いんだが、相馬聖くんのことで少しだけ話を聞かせて欲しい。本当に、すまない。こんな時に」


草臥れたスーツに嗄れ声。

語気の荒さとは裏腹に、母さんの背後から遠慮がちに姿を現した黒い人影は、以前俺達をしつこく事情聴取したあの刑事。


「聖くんは亡くなったよ」
「っ、」


返事の代わりに流れた涙が、診療所の真っ白で清潔なシーツに小さな染みを作る。


『最期まで一緒にって幸次とも約束したのにな。ごめん、千秋』


聖、聖、ひじり…


『さよなら』