あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─



毎日、親父に殴られて、蹴られて、罵倒される日々。けれど、昔みたいに反抗はしなかった。心のなかで嘲笑(わら)っていたから。


「偉そうになに言ってンだ」って。


部屋から一歩出ると、一つ傷が増える。言葉を一つ交すと、一つ心に闇が落ちる。季節は再び流れ、外は一面の冬景色。

深く重く降り積もった雪は、春には溶けるけれど。俺のなかで蓄積された親父への嫌悪は、もう二度と溶けることはないだろう。


「千秋、みんなから年賀状が来てるわよ?」


親父からの暴力や暴言で、唯一の救いだった母さんの存在が今では苦しい。言いたい、言えない、言えない、言えるかよ。


「……ありがとう」


押し込めてきたものを漏らしてしまわないように顔を伏せて受け取る。最後に母さんの顔を正面から見たのはいつだっただろうか。