*
「あの、千秋君は――」
季節は移り、木の葉が舞う秋。
玄関先から聞こえて来る友の声を耳に入れないようにそっと両手を持ち上げた。ごうごうと地鳴りのような音がする。〝自分〟の音。
あの夏の日の残像は余りにも強過ぎて。
なにをしていても、なにを考えていても、すぐに目蓋の裏から脳髄の先まで黒く穢く侵してくる。全てに絶望し、全てが嘘だと思った。家族も、隣人も、友人も、全部、ぜんぶ。
そんな俺が選択した道は、他人との距離を置くこと。学校へも行かなくなった。家族との会話もしなくなった。一人で居たかった。
「千秋、幸次君達が来てくれたわよ?ちょっとでも会っ」
「うるさい!」
母さんの顔も見たくない。見て、なんかいられない。
だってどうすれば良いんだよ。この、自分だけが抱える大きな爆弾。いっそ吐きだしてしまえば楽になれたのだろうけど、でも。
「あの、千秋君は――」
季節は移り、木の葉が舞う秋。
玄関先から聞こえて来る友の声を耳に入れないようにそっと両手を持ち上げた。ごうごうと地鳴りのような音がする。〝自分〟の音。
あの夏の日の残像は余りにも強過ぎて。
なにをしていても、なにを考えていても、すぐに目蓋の裏から脳髄の先まで黒く穢く侵してくる。全てに絶望し、全てが嘘だと思った。家族も、隣人も、友人も、全部、ぜんぶ。
そんな俺が選択した道は、他人との距離を置くこと。学校へも行かなくなった。家族との会話もしなくなった。一人で居たかった。
「千秋、幸次君達が来てくれたわよ?ちょっとでも会っ」
「うるさい!」
母さんの顔も見たくない。見て、なんかいられない。
だってどうすれば良いんだよ。この、自分だけが抱える大きな爆弾。いっそ吐きだしてしまえば楽になれたのだろうけど、でも。



