あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─

全部嘘だった。


『藤川さんの家庭、あたたかくて理想です。私もこんな風に素敵な家庭を作りたかったのだけれど、……ねえ、千秋くん。どうか、美菜と仲良くしてあげてね。お願いよ』


全部
全部
全部


『母さんはね、父さんのことを信じてるの。駄目なところも沢山あるけど、そこも含めて大好きだから。っ、ごめんね、千秋。千秋が辛い目にばかり遭ってしまうけど、守ってあげるからね』


全部
全部
全部


『千秋、釣りにでも行くか』


全部、嘘だった。

じわじわと、眼の裏側から滲んでくる心の嘆きが、喉の奥で燻る声を溶かしてしまう。今日、何度目かの全力疾走は、吐き出す場所のない想いを風に乗せて空へと放った。

そうして俺は、この日を境に人との接触を強く拒むようになる。傷付きたくなかった。傷付けて欲しくなかった。弱かったんだ、俺。