あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─



目的地まで本気で駆け走り、臓腑が灼ける。

脳に酸素が回らない。脚の筋肉の疲労と、激しく上下する肩、全身から噴き出す汗はその必死さを自分自身に刻み付けるように途切れることなく持続し、すんなりと引いてはくれなかった。

もし、もしも。

本当に親父が浮気をしているのであれば、きっとこの場所だろうと思った。普段は殆ど使われることのない藤川の別宅。たまに遠方からの客人が訪ねて来た時に宿泊施設として活躍するぐらいの場所。


「……嘘、だよな」


この後にも及んで俺はどんな幻想を抱いていたのだろうか。あの、クソ親父に。それでも母さんの為にと祈った。俺はもともと大嫌いだったから良いけど、でも、母さんだけは裏切らないでくれと。

母さんを大切にしていたアンタまで嘘だと言わないでくれと。

祈って、縋って、信じて。

気配を消して忍び込む、埃っぽい空間のなかで見えたものとは。


(ああ、もう、)