正直私は彼が苦手だった。






文武両道、才色兼備を絵にかいたような彼は、余りにも遠い存在だったから。









『いや、そこまでしなくても…』

『いいじゃない。私もスッキリしたいもの』

『それでも…』









『へぇ、軌跡の領域か…。面白いのやってるね。』









どうにか逃げようと言葉を探していると、急に視界が薄暗くなり、柔らかなテノールが後ろから聞こえた。






驚いて後ろを見ると噂通りの優しそうな顔立ちの良い男子がいた。





『あっ、日向君!』

『ふーん。これについて話してたんだ。』

『そうそう。なかなか解らなくてさ…。
咲希ちゃん、紹介するね。安田日向君。スッゴい頭が良いのよ。』



いや、頭がいいのはこのクラスの住人なら誰でもだろ!とか、
紹介する必要ないから!なんて思いながらも
顔全体の表情筋を屈指して笑顔を作る



『初めまして。お噂はかねがね聴いております。』

『うん。初めまして。白川咲希さんだよね。』



何故知っている!なんて聞けないわけで
思わずピクリと頬が歪んだ




すると彼は




『いっつもAクラスの子と話してるBクラスの子は君ぐらいだからね。』







なんて微笑みながら言ってのけた。











思わずドキッとした。

イケメンの微笑みは凄すぎる…









『で、この問題なんだけど、……こう考えるのはどうかな?』








そう言って近くの紙にどんどん書いていく姿に
私はいつの間にか見いってしまっていた。





















この思いはもしかしたら只の憧れかも知れない。











でも、見るたびに沸き立つこの思いは、本物に違いなかった