ーーーーーーーーー…… 『やっぱり格好いいよね』 『格好いいよねー、“倉本先輩”』 『恐いけど、それがまた良い!』 『わかる、わかる! 悪っぽいところが逆に良いよねー』 『そうそう!』 賑わう教室内の話に耳を傾ける。 次の授業の話。 人気雑誌の話。 愚痴をこぼす声。 “倉本先輩”の話。 その声……その名前を聞いただけで恐怖が身体中を走った。 「あずさ…大丈夫?」 青白い顔色の私に紗世が心配そうに尋ねてきた。 唯一、私の兄へのトラウマを知っている紗世。 「大丈夫……ありがとう」