(この気持ちって…もしかして……)
「残るはお前達だけか。」
絶頂に昇った気持ちは、聞くだけで身の毛もよだつ声によって地の底へ叩き落とされた。
ゲンナリした目を向ければ、その表情を楽しむように薄笑いを浮かべた清水教師が映る。
弾は思わず視線を反らした。
「…すまなかったな、水上君。生徒達の手前、連れて行かない訳にもいかなかったのだ。」
「いえ、仕方ありませんよ。気にしないで下さい。」
金髪の子―水上―は微笑むと、ではこれで…と反省室を後にした。
「えっ?なんで!?」
笑顔で見送る清水教師のあまりの豹変ぶりに、弾は噛みつく勢いで不満をぶつける。
「ちょっ、なんであの子だけアッサリ帰すんだよ!不公平だぞ!」
「………思い出した。アイツ、理事長のお孫さんやわ。」
「りじちょう…?」
理事長はこの学校の最高権力者。
その孫とあらば、機嫌を損ねる訳にはいかない大人の事情が絡むのだ。
「よく知っているな。水上劉牙君は理事長の孫、そして校長の子供という、由緒正しき血統の持ち主だ。」
「……だから金髪くらい大した事じゃねぇってのかよ」
「あの血族なのだ。何か事情があるに決まっているだろう?………それに比べて…」
途中で言葉を止めると、待ちわびたように謳花の髪を掴み上げる。
力の限りに引っ張られ、謳花は呆気なく机に突っ伏せられた。
「ッ…ぃ……!!」
「お前達の血は何の役にも立たないな。」
「ッ謳花!」
助けようと身を乗り出した瞬間、「来んな!!」と言う謳花の叫び声が響く。
それは、どうしても手が早くなる弾の身を案じての言動だ。
「……でも…」
「ええから。」
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