反省室はまさに、"善には最高の幸を、悪には最高の罰を"というこの学校のスローガンを惜しみなく形とした部屋。
ここから逃げ出せる奴は、例え牢獄に閉じ込められようとも容易く抜け出す力を兼ね備えている奴だけだ。
「なぁにが"悪には最高の罰を"だ!俺達ケンカと早弁とサボり以外は善そのものだっつの!」
「"俺達"って…俺も入ってんの?ケンカも早弁もサボりもせぇへんで俺」
「あ!?人の弁当つまみ食いしときながらよく言うぜ!」
「あれは早弁やなくてつまみ食いやもぉん」
「……ぷっ、ふふふ…」
フイに、コロコロと鈴が鳴くような笑い声が響く。
予想もしなかった笑い声に目を丸くさせて動きを止めると、ハッとしたように笑い声の主が息を吸った。
「あっ、ごめん…あんまり仲が良かったものだから」
肩まで伸ばしたサラサラの金髪を風に揺らし、声の主が申し訳なさそうに頭を下げる。
金髪からくるイメージとはかけ離れた対応に弾は暫く固まっていたが、心配そうに顔を覗き込まれ驚きと共に我に返った。
整った目鼻立ち、白い肌、ピンクの唇。
この顔が近付いて誰が驚かずにいられようか。
「い、いやっ別に謝る事じゃねぇよ!?俺達も煩くしちまったし…」
「そんな事ないよ。凄く楽しかった」
「そ、そっか?へへっ」
柔らかな笑顔を向けられて思わず照れ笑いをする。
弾にとって、こんなに体がギクシャクする事も、こんなに心臓がドキドキする事も、今まで生きてきて初めての事だ。
_

