抵抗なく漏れた声をオウムのように返すと、声の主である謳花がユックリと指を差した。
その指の先には、鋭い視線を眼鏡で隠し、校則違反の生徒を今か今かと待ちわびる教師の姿。
「げっ!よりによってアイツかよ!」
「今日は厄日やなぁ〜。清水センセーは不真面目な生徒イジメが大好きやし、逃げられへんわ」
どうしようもない事態に、二人の表情はもはや諦め一色となった。
身なりだけならば今ここで整えれば済むのだが、弾と謳花は銀色とオレンジ色の異髪コンビ。
しかも両方とも地毛という摩訶不思議な境遇のため、信じてもらえる確率は無いに等しいのだ。
「ヤだな〜…捕まるって解っててわざわざ目の前通らなきゃなんねぇんだぜ?」
「こうなったら最後の手やな」
「えっ、何かあんのか!?」
「名付けて、"あっち向いてる間にホイしてしもたらええんちゃう?"作戦や!!」
「バカかお前。」
案の定、目敏く眼鏡を光らせた清水に捕まったのは言うまでもない。(試しにやってみた)
***
「中学生に化粧など必要ない。このポーチは没収だ。明日までに反省文を書くように」
「マジかよぉ〜…バリウザいんですけど!」
誰も使わなくなった校舎の一室を借りた"反省室"で一人一人に罰を与える清水教師。
弾達に順番が回ってくるまではまだ大分時間がある。
「今のうちに逃げ出す方法を思い付かねーもんかねぇ」
「無理やろな。この部屋に窓は無いし、唯一の逃げ道はセンセーの後ろにある鍵のかかったドアだけや。」
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