鼓膜が張り裂けそうな程の怒声と共に、堅い物を破壊する音が鳴り響く。
弾の拳が、机に深く埋まっていた。
「―――っ」
そのあまりの圧力に、教師という立場を忘れて息を飲む清水。
水を打ったような静寂を見かねたかのように、本鈴であるチャイムの音が三人を包んだ。
「……授業に遅れるので、失礼してよろしいでしょうか?」
「っ、……このままで済むと思わない事だな…」
小さく呟いた清水を尻目に、謳花の腕を掴んで逃げるように反省室から飛び出した。
***
「――弾、…弾!!」
「っ…!」
謳花の焦ったような声に、グラグラと揺れていた意識が正常に戻る。
正常に戻った事で、自分の心臓が飛び出しそうな勢いで悲鳴を上げている事に気付いた。
「………ごめん。俺、折角謳花が庇ってくれてたのに…」
「アホやなぁ。清水、多分とんでもない仕返しするで。」
「…………。」
返す言葉も無い。
少し考えれば解った事だ。力で捩じ伏せても、一時的な解決にしかならない事を。
謳花の選択が、一番よりよい策だったのだと…
でも、大切な友が苦しむあの状況で冷静な判断が出来る程、賢い弾ではない。
「謳花が嫌がる事は、絶対イヤなんだよ…」
「……ったく…」
「だってッ、謳花すっげー嫌な顔して――」
「あれな、演技。」
「―――――へっ?」
涼しげな顔で告げられた言葉に、自分でも間抜けだと思える程に間抜けな声が漏れた。
とどのつまりは、あの苦痛の表情も、耐えるような声も、涙目も、全て欺く為に作られた偽物だという事なのだ。
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