気がついたら検査室には誰もいなかった。
痛みの記憶はうっすらある。
神崎先生の声も、少し残ってる。
"間違いないね"
入院が決まった日。ケータイで調べていたら、冷たい言葉ばかりが頻繁に記載されていた。
原因や特効薬はまだはっきりと存在してはいない。
そして、この病気は現代の医学では完治しないらしい。
一生の付き合いを余儀なくされる。
本当にそんな病気だとしたら。
「黒川さん、目、覚めました?」
看護師さんが来て、着替えるように言われて、しばらくしたら石山さんが迎えに来てくれて。
大丈夫だった?と聞かれたから、大丈夫でした、と答えた。
検査をしたのは神崎先生で、石山さんいわく、神崎先生はドクターの中でもすごく腕がいいらしい。
話す感じからは、想像もできないけれど。
病室に戻って来て、まだ麻酔が効いているのか、空中をふわふわしているような感覚に耐えられず、少しだけ寝て起きた。