「ねぇ、駅前のクレープ屋さん行こうよー」

「行ったらいいじゃん」

「一人でいけないもん。紗菜と一緒がいい!」

「…仕方ないなぁ。じゃあ、ルーズリーフ買いに行くの付き合って」

「いつものじゃないとダメなんだもんね」

「そう。書き心地がいいんだよねー」


なんだかんだ言っても、私だって付き合いたくない人とは絡みたくない。

なんでも、とは言えないけど、色々話せる友達だし、気を遣わせないのが莉乃の長所だと思う。

窓の外にふと見えたのは、青い空。

今日は、いい天気だったらしい。

日が長くなり始めて、ちょっと遅くまで遊んでいても帰り道が怖くなくなってきた。

教室を出て、2階の廊下から改めて見渡す景色は、春色に染まっている。


「ねぇ紗菜、1組の新井君って知ってる?」

「新井?サッカー部の?」

「そう!かっこよくない?」

「小学校のときから知ってるから、男として見れないけどなぁ」

「え、知り合い?」

「言っとくけど連絡先は知らないよ?」

「もー、期待したー!」


ごく普通の高校生活。ってなんだろう。

毎日学校に来るのが楽しいとか?

勉強して、部活して、友達と青春すること?

じゃあ、私の学校生活はアブノーマル。

楽しくもなく、通いがいもない牢獄に、なぜ自分の足で通うのだろう。

すれ違う、同じ服をまとった人間たちにガンを飛ばしながら歩くこの廊下も。
窓も、机も椅子も黒板も全部、なくなってしまえばいいのに。


「黒川、スカート短いぞー」

「黒川さん、髪が長いなら束ねてくださいね」

「化粧するなって何回言ったらわかるんだ黒川」


あんたらに迷惑なんてかけないでしょ?

うざいったらありゃしない。

顔を合わせればみんな、小言ばっかり。

はっきり言う。私は学校が嫌いだ。

あんたらに未来背負われるくらいなら、学校なんて辞めてやりたいっつーの。