シャワーを浴びて、洗面所で髪を乾かしていると、まだパジャマ姿の澪がまとわりついてくる。

ママと一緒に目を覚ましちゃうくせに、起きてきても忙しいママには構ってもらえない。

だから毎朝の澪のお世話は私の仕事みたいになりつつある。


「おはよう、澪」

「おねえちゃん、おはよー」


ブローしがてら、私を見上げる澪に生暖かい弱い風をかけていたずらすると、嫌がるそぶりをしながらも笑ってる。

寝癖でところどころくるんとしてる澪の髪をセットするのも私の仕事。

終わったらとかしてあげるから待ってて。

そう言ったけど、ドライヤーの音が大きくて澪に聞こえたかはわからない。

でも、澪は私に引っ付いて笑ってる。

ドライヤーのそれとは別物の温もりは、体からも、心からも伝わってくる。


「澪は魔法使いだね」


ドライヤーを片付けながらそう言った私に、澪は不思議そうな顔をする。


「澪、ほうきでお空飛べないよ?」

「でも、澪が笑うだけでおねえちゃん幸せな気持ちになって、笑顔になるんだよ。パパもママもおんなじ」


それって、すごくステキなことだよ。

しゃがんで頭を撫でたら、ふふ、と肩をすくめて恥ずかしそうに笑う澪。

つられて笑ったら、澪も私の頭を撫で始める。