11.ありんこみたいな私でも
入院して2度目の大腸内視鏡検査は、初めほど痛みも無く無事に終了して、病変も確実にその範囲を小さくしていると知らされて、嬉しい結果だった。
検査室で"明日からご飯出すよ"と神崎先生に言われた瞬間からお腹が空き始めて、笑われたけれど。
調子が悪くなったりしたら無理しないようにと、念押しされた。
「まだ万全ってわけじゃないからね。少しずつ、お腹もご飯を受け付けられるようになっていくと思うからさ。焦らずに頑張ろう」
焦って退院が長引いちゃう人、結構見てきたから。
思い出しながら呟いた神崎先生は、きっと私が想像するよりたくさんの患者さんを診てきたのだろう。
たくさんのストーリー。でも、ちゃんと覚えてるんだなぁ。
素敵だなって思った。
検査終わった?とメールをくれたのは杏子ちゃんで、間もなく私の病室に駆けつけて、どうだった?と聞いてくれる。
「明日からご飯だって」
「おぉ!よかったねー!」
「ご飯食べると、やっぱり調子って多少は悪くなったりするかな?」
「私は、思ったほどじゃなかったよ!最初はおかゆよりもっと粒がない、水みたいなご飯から始めるから、大丈夫!」
「そっか、安心した」
食べれるって、幸せなことなんだなぁって思うよ。
そんな杏子ちゃんの言葉が、きっと私にもわかるんだろうなって思ったら、既に幸せだ。
「どんなおかず付くかな」
「んーとね。とりあえずお味噌汁は具なしだったかな」
「やっぱり最初はそうなんだぁ」
「でも徐々に、お味噌汁に大根入ってたり、お豆腐とか付いてきたりするよ。てか、味のあるあったかいものが食べれるってことに、多分最初は感動すると思う!食べてなさすぎて」