「まず、勉強したいです」
「勉強?」
「友達の話聞いて、やっぱり私も夢をあきらめたくなくて。進学、したいと思ってて」
「だから、いつも勉強してるわけだ」
「はい。それと友達といっぱい遊んで、元陸上部なので走りたいなっても思うし、食事制限がこれからつくから、料理とかも挑戦したいし…」
私の尽きない欲求に、江口先生が笑う。
「安心したよ。それなら大丈夫そうだ。ちゃんと前向けてる」
「強がってるとかじゃないんですよ?本当に心の底から楽しみに思ってます。退院したら、って」
元気になったら、どうすればいいんですか。
最初はそう聞きたくてたまらなかったのに。
今では自分の中から答えが湧いてくる。
「だから、お父さんにはいろいろと言わなきゃならないことがたくさんです。普通の親子になる前にすっきりさせておかないとならないことが」
「多分、明日が一番のチャンスだから。朝も顔出すけど、あんまり考えすぎずに、思いつめすぎずにね。応援してるから、黒川さんのこと」
莉乃も夏美も、優奈ちゃんも杏子ちゃんも、みんな私の味方。
そのパワーを信じた私は、無敵だ。
お母さん、私、やっと一歩前に進めそうな気がするよ。
机の上でいつも私を見守っているぼろぼろのお守りに微笑んで、江口先生にはっきりと告げた。
「私、頑張ります。変わりたいから」