想い焦がれるのは。


「ご、ごめんね!私、ずっと泣いちゃってたね。」
「ううん、全然平気。落ち着いた?」
「落ち着いたよ。ありがとう。」

泣いている間、柚ちゃんはずっと小さい子をあやすように頭を撫でていてくれた。私にはそれがすごく心地よかった。

「ねえねえ、私千尋って呼び捨てで呼んでいい?私のことも呼び捨てでいいからさ!」
「呼び捨てなんて久しぶりにされるなあ・・・嬉しい。私もゆ、ゆ、柚って呼ぶね!」

呼び捨てされるのはすごく嬉しいけど、自分が呼び捨てするとなると難しい。まず呼び捨てなんてしたことがない。

「いやいや、そんな無理に呼ばなくていいよ!千尋は慣れてから、ね?」
「そ、そうさせていただきます・・・」
「なんでいきなり敬語?変なの!」

おかしくなって私達は笑い合った。友達と笑い合うことがこんなに楽しいことだって、忘れてた。それを思い出させてくれたのは柚ちゃんだ。

「柚ちゃん、ありがとう。」
「どういたしまして。ってなにもしてないんだけどね。」

それから私達は他愛もない話しを外が暗くなるまでずっとしていた。これが他の人には当たり前のことであっても、私にとってはすごく新鮮なことだった。