「ほっほっほ。サンピエールの小せがれ達は、いつまで経っても血気盛んじゃのう。じゃが、おぬしらだけを行かせる訳にも行くまいて」
「リヨン爺さん……」
 ユスターシュは高利貸しで有名なリヨンの名を、目を丸くしながら呟いた。
「まさか、あんたも……?」
「ほっほっほ。この命の使い道があると聞いて、放っておけんでのう。しかも、六人必要なのじゃろう? おぬしら二人が行っても、まだ四人は要るじゃろうが」
「しかし、爺さんが行ってくれるとしても、まだあと三人……」
 そう言うと、ユスターシュは群集を見た。
 途端に、みんな後ろに退がる。
 先ほどまであんなにユスターシュを責めたりしても、自分が死ぬかもしれないめに遭うというのは、みんな嫌だったのである。
「あと三人は、どうやって決めれば……」
 アンリがそう言って絶望の入ったため息をついた時だった。
「ほっほっほ。そう悲観するでないわ、若いの。その三人なら、わしが見つけておるからな」
「見つけてるって、誰をです?」
 ユスターシュがそう尋ねると、リヨンはにやりと歯の少ない口で笑った。
「わしと同じ年くらいで、なかなか金を返さない者がおるんじゃ。一人は、そいつじゃな。あとは、同じ高利貸しで、年もわしと同じ位の嫌われ者がおる。そいつじゃな。それと、わしの親戚で、病で長くないと言われておる者。そいつに頼めばよかろうて」
「そ、そんな……。いいんですか?」
 ユスターシュが珍しくオロオロしながらそう尋ねると、リヨンは歯の少ない口で、豪快に笑った。
「ほっほっほ! おぬしはまだ若くて分からんじゃろうが、命には使い道というのがあってな。ある程度の年齢になって、お迎えが近くなると、その有効な使い道を考えるんじゃよ。まぁ、早く言えば『カッコいい死に場所』ってことじゃな」
「カッコいい死に場所……」
 若いアンリがそう呟くと、リヨンは再び笑った。
「そうじゃ。じゃから、わしに任せておけ」