「ごめん……なさい」
 

やっとそれだけ絞り出すと、彼は冷たく言い放った。


「許さないからな」
 

倫太郎は、激しい怒りを隠せないようだった。


心なしか、いつもと瞳の色が違う気さえした。
 

七海子の頭が、ぐらぐらとした。
 

自分は今、「許さない」と言われている。


事件の解決に向けて、『鬼』を追わないから……。


(私は……私は……)


「……先に、帰っていろ」
 

七海子が我に返ると、倫太郎はもう図書室からいなくなっていた。



(彼はどこかへ行くんだ……どこへ行くんだろう……)
 

床に、本が散らばったままになっている。
 

七海子はのろのろと本を片付け、ぼうっと立ち上がった。



(帰ら、なくちゃ……)