臆病者の鬼遊び




あれは、お正月だから皆、着物を着ているんだと思っていた。

違うのか。
 

花代さんは不思議がる七海子を、すこし複雑な表情で見つめてから、すぐにころっと笑った。


「今日から、七海子も着物着る?」


「ええ? いいよ別にー!」


「遠慮しない、遠慮しない。

着物ならいくらでもあるんだから!」
 

確かに、花代さんは本当は洋服よりも着物の方が好きだ。

でも、着物ではあまり一般向けの商売にならないので、洋服を取り扱っている。



「もう、言う事聞きなさい、このっ!」


そう言いながら、花代さんは七海子をくすぐった。
 


「ああん、もう! ひゃははははっ! 苦しい苦しい!」


「駄目ーっ! 降参するまでやめませーん!」


「うくくくくっ……! 


降参、こうさーん……!」
 

倫太郎の存在をすっかり忘れたように、きゃーきゃー大騒ぎをして笑っている七海子達を、


倫太郎はただじっと見つめていた。