七海子も、何とか倫太郎が使えそうな部屋を探し、マスクを装着して古い畳を上げ、
掃除機でガーガーやったり、必死に雑巾がけをしたりしていた。
(ちなみにその時、倫太郎は屋敷の中を探検していたと、後で知った)
この時気付いたのだが、七海子は自分で思っている以上に非力だった。
廊下に積まれた段ボールを、邪魔だな……と手をかけたはいいものの、
とても持ち上がる気配などなく、うっとなった。
……さっきは、引っ越し屋さん達が簡単にひょいひょいと運んでいたのに、
今はまるで、段ボールが床に縫い付けてあるようだった。
さすがはプロの、むきむき男達……、と感心していると、
花代さんは冗談めかして「引っ越し屋さんに、何人か残って貰えば良かったわね」
なんて勝手な事を言った。
七海子もふざけて、「引っ越し屋さんは、団体行動してなくちゃいけないんだよ」と言ってみる。
本当は、掃除が間に合わなくて、引っ越し屋さん達を、
廊下に荷物を運び込んだだけで追い返したわけだが、それは言わない約束だ。



