七海子は、引っ越し屋さん達を指差しながら、口をぱくぱくさせて言った。


「あ、あの、花代さん……これって……」

「あら、リンタロ君から聞いてない?」
 
花代さんが倫太郎の方をちらりと見ると、倫太郎は、

「まだ話してない」
 
と言い、七海子の方を見た。
 


―――爆弾は、花代さんが落とした。




「倫太郎君ね、今日から一緒にここに住む事になったのよ」
 

それは、極めて軽い口調だった。

「う、嘘ーっ!」
 
七海子が叫ぶと、とうとう倫太郎はお腹を抱えて笑いはじめた。
 

どうやら、七海子のリアクションが見たくて、わざと言わなかったようだった。


(この、意地悪……!)
 

七海子は心の中で精いっぱいの悪態を吐いたが、


とにもかくにも、彼女は今日からこの『意地悪』と暮さなければならないのだった。